わんぱく宣言2008/全国こども作文・スピーチコンテスト 公式ホームページ
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わんぱく宣言 2007 テーマ「我が家の食卓」
優秀賞
(中学生の部)
川股 ちぐさ (かわまたちぐさ)  
北海道/私立札幌日本大学中学校3年
「カード」 スピーチを聴く

「すまんすまん」
何時もの様にそう言う月並みな親父下着の父親の後ろ姿は、ソファの上に転がる。一体何が済まないと彼は言うのか。
  私の父は家族に謝る時、こう軽く言う。否正確には謝って等いない。世間に於けるこれを口にすれば謝罪した事に成るであろう言葉をほいとばかりに投げ掛けて来ているだけだ。そこに思考は無い。
  これは食事の時でもそうである。ゴロリと大トドの如く落ち着いていた定位置から、もそりテーブルにつくともそもそと御飯を食べる。この年にして野菜が頂けず、当然の様に何時も余す。母の苦労を知る身としては、折角の団欒も不愉快極まりない。そんな時私は乱暴に鮭の切り身を引っ裂き、母に叱られる。
  ある時母に訊いてみた。なんで結婚したんだい。母は、押し切られて。と言った。それ以上は尋ねなかった。私の望む答ではなかった。
  もやっとしたまま部屋へ向かった。
思うに、結婚とは契約だ。その他の縁は両者には無い。
反面、親子の絆は絡みついて来る。私の浅黒い皮膚も膨満胃も、完膚無き迄に父のものだ。
  途中玄関に通り掛かった。父の革靴が脱ぎ捨ててあった。暫し躊躇い、揃えてやった。
  父の誕生日になった。数段平生よりも格上の皆の食卓で、贈物と共に私はカードを渡した。会話の少い私達なので、せめてこの機会にと中々頑張って書いたものだった。父はフンフンと読み、直ぐそれを放った。やっぱりな、と思おうとしたが、その後の食事の味が変わった。
  その日、母が仕事から帰ってきた。私は何とは無しに先程の不満をぶちまけていた。
すると、母は言った。あんたのカード、事務所の父さんの机に貼ってあったよ。
  明くる日の午後、大トドのプレスしたソファは毎度ながら大変乱れており、私はそれをささと直した。
遊んでいた弟が言った。
姉さん、父さんと仲悪いのになんで必死でカード書いてたのさ。
  私は振り向き、彼に言った。
  御前には、或いは一生解らないかもね。

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